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22章 通りすがり

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百次郎(ひゃくじろう)は一時的に北原秀次のところへ転がり込み、小野陽子(ようこ)の言葉通り、この子は犬としては賢い方だった。騒がないし、迷惑をかけることもほとんどなく、北原秀次もこの子がここにいることには問類がなかった。時間がたつにつれて、この子のおべっか笑いな顔を見るのもなかなか面白いものだった。

小野陽子は毎日放課後に百次郎と遊びに来る。安いエサを持ってきてくれるが、それは彼女が口を割いて獲得した物なのか、それともゴミを拾ったものかは定かではない。彼女は従順で、百次郎と廊下で駆け回ったり騒いだりするだけで、北原秀次のアパートには入らない。それは持て成しの品がない為、恥ずかしさから遠慮しているのか、それとも北原秀次の学習に影響を及ぼさぬよう迷惑をかけないためなのか。

北原秀次は「文武両道」を念頭に置き、体力と活力値が許す限り剣術の練習をしつつ、疲れたら勉強をする。半月が過ぎると目の下にクマができてしまったが、精神力は依然旺盛だった——この世界には耐えられない苦しみなど存在しない。痛みさえも我慢でき、怠け心に身体を委ねることさえなければ、一日にやれることは自分の想像を超えることができる。

ところで、あの小ロブヘッドの福泽冬美についてだが、このところ彼女と出くわすたびに口喧嘩をしてしまう。それが習慣とでもなったかのようだ。昔からのどなたかの遺恨でも持っているのかしら? 彼女は北原秀次を見ると何故か機嫌が悪くなり、彼を自分のはけ口番とするかのように見えるのだ。そうなると、彼女の不機嫌な機嫌を何とかしなければならない。

ただ、お互いの間で適切な機会が見つからない為、対立はあまり大きくならない。とはいえ、これもかなり北原秀次にストレスを与えており、初めてその小ロブヘッドが嫌な存在に思え始めた。

……

深夜のアパートで、北原秀次はゆっくりとペンを置き、プリントをつかんで確認した。彼の学力は回復しており、高校1年生の基本的な内容に対処するのには問題がないようだった。しかし、油断は禁物だ。優秀な学生を選び出し、特進科を組織するために、高校1年生の最後の大試験では多数の追加問題が出されるという。まだ油断する段階ではない。

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