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110章 プロポーズをするつもりです_2

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そのとき、冬美が小走りで駆け寄ってきて、また一杯の佛跳墙を運んできた。彼女の小さな顔には隠しきれない喜びが溢れていた。この料理は本当によく売れて、来店者の中には少なくとも一杯、多い人はすでに三杯も食べている人がいる。彼女は値上げすることはなく、その代わりに店を飛び出して、2899円の価格を3899円に変えてしまった。

彼女はドアの外を覗くと、その香りが半分の通りを包み込んでいて、向かいのARA新型居酒屋のスタッフまでこちらを覗いている。今まで軽視していた相手についに敬意を示すようになったようだ。

彼女は心の中で得意になり、自分の店に人が増えてくるのを見て、復讐したという感じがした。こんなにも簡単に報復できるなんて、彼女は全く予想していなかった。

佛跳墙の誘惑力は、単純な酒のつまみよりもはるかに強力で、木村光彦の心はすぐに自分の前にある小さな碗に戻り、再びスープを飲み始める。彼は待つことができず、上級エリートの体裁を忘れてしまうほどだった。

その心温まる幸せ感が、人を惹きつけてやまない。

彼はスープを一口飲んで、カニみそ巻きを取り、そして美しい豆腐の彫刻にもついに手を伸ばした。冷たくてさっぱりした味わいがレモンジュースの酸味とマッチして口の中で爽やかな感じが広がり、シンプルな前菜でさえも心地よさを感じさせる。

彼はついに、美食とは幸せを伝えるためのものであるということを理解した。

彼は美味しく食べていて、職場の厳しい競争によって早くも消え去った幸せ感をじっくりと味わっていたら、突然後ろで誰かがテーブルをバンと叩く音がして、思わず戸惑って振り返った。そこには、自分と歳が近い会社の社員が席を立っていた。

その会社の社員は何かいい会社で働いているとは思えない。確かにスーツを身につけているが、明らかに安物のオフ・ザ・ラックのスーツだ。それに、部屋中の驚きの視線を全く気にしないで、半分の生ビールを一気に飲み干し、「そうだ、もう友子を失望させるわけにはいかない!」と大声で叫んでいた。

北原秀次も驚いて顔を上げて見た。友子って誰だ?彼はじっくりと見てみたが、その男のそばには女性どころか同伴者すらいなかった。彼の記憶では、ついさっき悩み事を抱えて飲んでいた人だったはずだ。

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